序文 ― 夢が悪夢に変わる時
人は誰しも夢と共に生きています。ある夢は小さく素朴で、またある夢は国や時代を背負うほど壮大です。知識人であり高級官僚でもあった劉思遠(リウ・スーユエン)氏は、その全人生をそのような夢の構築に捧げました。それは、強大で文明的、かつ世界から尊敬される「中国の夢」です。彼は自らが選んだ道を信じ、忠誠を尽くして仕えた体制を信じていました。
しかし、その理想の城が崩れ落ち、父が、その偉大な夢を築くために体制が要求した代償が、彼が最も愛する一人娘の命であったことに気づいた時、何が起こるのでしょうか。『紅の帳』は政治分析の本ではなく、ある内部告発者の痛切な告白であり、想像を絶する家庭の悲劇によって嘘の帳が引き裂かれた後の、血と涙に満ちた覚醒の旅路です。
痛みに満ちた覚醒への旅
かつて哲学教授であり、重用された政策立案者であった劉思遠氏は、中国共産党の指導を固く信じ、そのキャリアを歩んできました。体制内の多くの人々と同様、彼は真実が管理・誘導され、「敏感な」問題が華やかな経済的成果の裏に隠される「情報の泡」の中で生きていました。彼はかつて、宗教や法輪功のような精神修養法を「迷信」であり、進歩を妨げる過去の遺物と見なしていました。
彼の覚醒は一瞬のできごとではなく、ゆっくりとした痛みを伴う崩壊の過程でした。それは、彼の優秀な一人娘であり、唯一の誇りであった安然(アン・ラン)が、ただ法輪功への信仰を理由に逮捕された時に始まりました。その時、彼はまだ、残された人脈と地位を頼りに、無駄と知りながらも正義を求めようとしました。しかし、最後の衝撃、最も恐ろしい真実が彼を襲いました。安然はただ殺されたのではなく、生きたまま臓器を摘出されるという犯罪の犠牲者となっていたのです。その瞬間、彼の体制に対する全ての幻想と信念は、完全に砕け散りました。彼がかつて追い求めた「夢」は、実の娘の血で描かれた悲劇的な茶番として現れたのです。
紅の帳を掲げる ― 真実と向き合い、信仰を取り戻す

悲劇の後、劉氏の旅は、正義を求める父の旅であるだけでなく、真理を探求する魂の旅となりました。ジャーナリストのソフィア・ベル氏による忍耐強く思いやりに満ちた傾聴と、その後の同僚ジュリアン・リー氏による鋭い政治的・哲学的分析の参加を通じて、劉氏の物語は徐々に明らかになります。 人生で初めて、彼は偽りのプロパガンダという「紅の帳」から抜け出し、人道に対する罪を容認し、さらには首謀した政権の邪悪な本質を直視しました。彼は、法輪功への迫害が単なる政策ミスではなく、独裁的な指導者の嫉妬と非合理的な恐怖によって引き起こされた、計画的なジェノサイド・キャンペーンであったことに愕然としました。
そして、最も暗く絶望的な日々の中、慣れ親しんだ世界が彼に背を向けた時、彼はかつて軽蔑していた人々―法輪功学習者―から、無償の助けと慰めを受けました。彼らの不屈の精神、慈悲、そして並外れた勇気を通して、また自ら『転法輪』という本を読むことを通して、彼は人生の大きな問いへの答えを見出したのです。彼は、なぜ娘がそれほどまでに信仰を固く守ったのかを理解しただけでなく、彼自身も新たな道―「真・善・忍」に従って修煉する道―を見つけました。その道は、彼が悲しみを乗り越え、人としての意味を再発見する助けとなったのです。
結び ― 良心のための証言
『紅の帳』は、魂からの証言であり、沈黙の中で苦しむ何百万人もの無実の犠牲者のための声です。それは、遠くから見れば青々としたユーカリの森のような華やかな物質的「成果」と、その下に広がる道徳、文化、人権の砂漠化という厳しい対比を、赤裸々に描き出します。そしてもう一方では、信仰の不屈の力、何ものにも消し去ることのできない内なる善性の美しさを描きます。
本書は、ある一つの家族の悲劇を語るだけではありません。それは、国家が良心を失った時に支払う代償についての警告です。読者の皆様には、この物語に、裁くためではなく、耳を傾け、深く考え、そして真実のために倒れた魂たちと、正義の光がいつか最も暗い帳をも貫くだろうという希望のために、一筋の香を捧げる気持ちで触れていただきたいと思います。
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